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欧州特許庁の拡大審判部による新たな審決:請求項の補正に合わせて明細書の記載を整合させる必要性についての明確化

去る9月3日に下されたG 1/25(1)に関する審決は、請求項の解釈において明細書および図面が果たすべき役割について扱っている。この新たな審決は、2025年に下された審決G 1/24で示された原則を明確化し、補完するものである。同審決は、明細書を必然的に請求項に合わせて整合させる必要はないことを示しており、欧州特許条約の要件を満たさないことにつながる不整合のみを排除すればよいとしている。

G 1/24およびG 1/25で付託された問題

G 1/24において、拡大審判部は、欧州特許条約の第52条から第57条に基づく特許性の判断を行う目的で請求項の解釈を確定するに当たり、明細書および図面を常に参照すべきであるとの判断を下した。付託のきっかけとなった事案は、請求項中の用語の解釈に関するものであった。当該用語には、当該技術分野における慣例的なの意味と、特許権者が明細書で示した定義という、2つの解釈が可能であった。しかし、最も広義に解釈した場合、当該請求項は新規性を欠くものとなった。

G 1/25では、手続の進行中に請求項中の技術的特徴を補正したために、明細書の特定の箇所との整合性がとれなくなったという事案が、拡大審判部に付託された。

審決G 1/25の概要

まず冒頭で、拡大審判部は「不整合(inconsistency)」の存在条件を定義した。この用語は欧州特許条約の中では使用されていない。拡大審判部の見解では、不整合が存在するのは以下の2つの条件が満たされる場合である。すなわち、明細書および図面の理解が請求項の一見してとれる解釈と相容れない場合、かつ、その不整合が出願全体を考慮して解釈することによって容易に解消できない場合である (2)。

不整合性の判断の根拠となる決定的な基準は、明細書に鑑みて解釈された請求項にどのような意味を与えるべきかについて、当業者が抱く疑問(「real doubt」)にある。もし、当業者が、明細書に記載された実施例、実施形態、または技術的教示が請求範囲に含まれるか否かについて疑念を抱き続けるのであれば、不整合性があると考えられる。しかしながら、これらの要素が明細書に残っているが請求範囲の適用範囲に含まれていない、という事実のみをもって不整合が認められるわけではない。

上記に基づくと、欧州特許条約の規定に違反する結果をもたらす不整合については、これを解消しなければならないことになる。一方、不整合が何らの拒絶理由も生じさせない場合、欧州特許条は請求項と出願書類の他の部分との形式的な整合性を要求していないため、補正は求められない。

審決G 1/24(3)を踏まえ、拡大審判部は、欧州特許条約の第84条が請求項に対して要件を課していると考える一方で、これらの要件が満たされているかどうかについては、明細書および図面を考慮して評価されなければならないとも明言している。従って、当業者は明細書に記載された定義を参照して、請求項の用語を解釈することができるが、これは、その定義が「技術的に合理的」でありかつ出願全体の内容と整合しているという条件を満たしている場合に可能である。

G 1/25の適用範囲

まず、欧州特許条約の要件を満たさない不整合は是正されなければならない。欧州特許条約の第52条から57条、76条、83条、84条および123条の要件が満たされなければならない。

次に、手続の段階は問わない。つまり、審査手続と異議申立手続および審判手続とを区別する必要はない。

最後に、拡大審判部は、その審決の範囲を請求項の補正に起因する不整合に限定しているが、補正されていない請求項の場合にも同様の問題が生じ得ることを認めている。

実務上の影響

請求項が限定された場合、補正後の範囲に含まれなくなった実施形態を削除することは、必ずしも必須ではない。請求項に上がっていない明細書の記載事項であっても、その存在が請求項の解釈に疑問を生じさせない限り、明細書に残しておくことができる。

明細書が間接的に請求項の範囲を変更することにならないよう、明細書の補正には特に注意を払う必要がある。

明細書に記載された実施例が、修正された請求項の範囲外となったという事実のみでは、今後は明細書の補正を要求するには不十分であるように思われる。今後は、明細書の補正には当業者に請求項の解釈について疑問を抱かせ、かつ欧州特許条約の規定に違反することを証明することが必要とされるようである。

拡大審判部は、付随的に、明細書はほぼ常に口頭審理の過程で最終的な形にされるものであると指摘し、この問題のために事案を第一審に差し戻すよりも、審判の過程で補正を行う方がより効率的であると判断している。

結論

審決 G 1/25は、欧州特許条約が、補正された請求項に合わせて明細書および図面を必然的に整合させることを義務付けていないことを改めて示している。しかし、出願書類全体を読み解いた際に、当業者が疑問を抱き、その結果として欧州特許条約の要件が満たされなくなるような場合は、整合させることが必要となる。

この審決を踏まえると、欧州特許庁の審査官が、特許付与に際して提案する明細書の補正を行う傾向が弱まることが期待され、それによって補正された明細書の検証や、必要に応じた議論が簡略化されるだろうと考えられる。

この審決が、欧州特許条約の第69条に基づく請求項の解釈において、各国裁判所および欧州統一特許裁判所にどのような影響を与えるか、その動向に注目したい。

1- 欧州特許庁 拡大審判部、2026年9月3日、G 1/25、Hydroponics、ECLI:EP:BA:2026:G000125.20260903

2- 2番目の要件は 審決G 1/24で示された原則に由来する。

3- 「…請求項は明確かつ簡潔でなければならず、明細書に基づいていなければならない。」

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